読書猿さんのことが好きである。博識だからでも、マシュマロに親切に答えてくれるからでも、独学の師だからでもなく、彼がフィールドを大きく使う人だからだ。

僕はカテゴリー先行の考え方が嫌いである。「hogehogeだから、これはこういうものなんですよ」という考え方は現実的であるようで、単に前例主義に過ぎない。言い換えれば、そこにあるフィールドを小さくしか使えてない。

現実の可能性はもっと広く、大きい。

『アイデア大全』では、いわゆるビジネス書に挑戦状を叩きつけた読書猿さんは、「こういう本でも売れる」可能性を提示してくれた。その後に続いた大全ものは、後になるほど涙を必要とするものになってしまったが、それでもインターネット時代においてこそ、大全的な情報アプローチが有効だということは示してくれたように思う。本の書き方を広げてくれたのだ。

2020年9月29日に発売される『独学大全』も、3000円越えで720ページという、「常識」では考えられない本作りである。でも、常識はいつでも塗り替えられてきたのだ。ほとんど無謀とも言える挑戦者によって。フィールドの境界線をぎりぎりまで攻めるフロンティアによって。

フィールドを大きく使う人は、ときにフィールドそのものを広げてしまう。境界線を書き換えてしまう。僕は、そういう試みを大胆に行える人にあこがれるのだ。